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メールマガジン掲載記事

◆◆◆学びの鍵◆◆◆

こちらでは、メールマガジンで取り上げられた内容を掲載しています。

2024年4月1日(第20号)


​​【火山のリスクを正しく理解し、正しく備える】

 4月1日付で「活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第60号)」が施行されました。日本全国での活発化する火山活動への備えが急務である、という認識の下、「避難確保計画の作成等に係る市町村長による援助等」「迅速かつ的確な情報の伝達等」など7項目について改正が行われています(※1)。事実、3月23日(土)未明、北海道駒ヶ岳では火山性微動が発生しました。また3月29日(金)16時現在、桜島は噴火活動が継続しており南岳山頂火口及び昭和火口から概ね2kmの範囲では、噴石の飛散、火砕流、爆発に伴う窓ガラスの破損、降雨時の土石流への警戒を呼び掛けています(※2)

 日本全国には111の活火山があるにもかかわらず、そのリスクに対する備えが充分ではないのではないか、という懸念があります。理由として、その被害を実感する機会が、幸いなことに少ないからかもしれません。過去100年の間、10人以上の死者・行方不明者が発生した火山災害は6件のみです(※3)。頻度が大きい地震・津波に比べると、「どうせ大規模な噴火はめったに起きないだろう」と考え、火山噴火による災害リスクを過少に捉えてしまうのも「正常性バイアス」と言えるのかもしれません。

 しかしながら、特に降灰による社会インフラへの影響の大きさは看過できないものと言えます。富士山噴火による影響を重視した東京都は、2023年12月に「大規模噴火降灰対応指針」を策定しました(※4)。この中で東京都は、「在宅避難を基本とする生活に対応した物資供給体制の構築と降灰に備えた備蓄の促進」などとともに、「都民等が災害を自分事と捉え、必要な情報にアクセスできる仕組みの構築」を到達すべき目標に掲げています。

 なお4月1日付で文部科学省によって「火山調査研究推進本部(火山本部)」が発足しました。政府として火山に関する観測、測量、調査及び研究を一元的に推進し、活動火山対策のさらなる強化につなげます(※5)。防災士専門講座では、この火山本部の設置に向けた準備会で副座長を務められた藤井敏嗣先生(山梨県富士山科学研究所 所長)による「火山」「富士山噴火」講座をご用意しています。正しく理解し、正しく備え、正しく恐れるために、ぜひ次回開講のタイミングで聴講なさってみてください。

※1 内閣府「活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第60号)の概要」
※2 気象庁「桜島の活動状況」
※3 気象庁「過去に発生した火山災害★18世紀以降、我が国で10人以上の死者・行方不明者が出た火山活動
※4 東京都「大規模噴火降灰対応指針 概要」
※5 令和6年4月1日から 文部科学省に火山調査研究推進本部が設置されます!

​​【能登半島地震から見たインフラ対策の緊急性】

 能登半島地震から4月1日で3か月が経ちました。被災した珠洲市でほぼ全域の約4,250戸、輪島市約2,600戸、能登町約800戸など5市町約7,860戸でいまだに断水状態が解消されていません。水道管路1キロあたりの被害を見てみると、輪島市で2.63箇所となっており、熊本地震(熊本市)の0.03箇所、東日本大震災(仙台市)の0.07箇所、新潟中越地震(新潟県長岡市)の0.30箇所などを大きく上回っています。具体的には斜面崩壊に伴う管路の流出や、非耐震管の被害が多く発生していました(※1)。

 2022年度(令和4年度)、導水管や送水管など、「基幹管路」と呼ばれる水道管の耐震適合率は全国平均42.3%でした。石川県は37.9%と全国平均を下回っています。水道事業は主に市町村が主体であり、全国に約4,300存在していますが、管路更新が進まない理由として①節水機器の普及や人口減少により有収水量(料金収入の対象となった水量)が減少した結果、約3分の1の水道事業者において、原価割れを起こしているため②携わる職員数はピークの1980年と比べて39%程度減少していて資産管理や危機管理対応が十分に行えない状況にあるためとされています(※2)。さらに管路の場合、管自体の耐震性能に加えて、その管が布設された地盤の性状(軟弱地盤、液状化しやすい埋立地など)によって、その耐震性が大きく左右されることもあります(※3)。

 2024年(令和6年)4月1日から水道整備・管理行政が厚生労働省から国土交通省及び環境省へ移管されます。社会資本整備や災害対応に関する専門的な能力・知見や、層の厚い地方支分部局を活用しつつ、上下水道一体で取り組む体制を構築し、機能強化を図っていくとしています(※4)。また大阪や神奈川、広島や香川などで複数の市町村自治体が集まり「広域水道企業団」を形成し水道事業の経営改善ならびに耐震化対策に取り組む動きも見られます。

 今回取り上げた上水道だけでなく、下水道や道路、トンネル、橋など多くのインフラの経年劣化・耐震化対策が喫緊の課題となっていると言えるでしょう。
 
※1 第1回上下水道地震対策検討委員会(2024/3/12)上下水道施設の被害状況について
※2 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課「令和3年度全国水道関係担当者会議 令和4年3月9日(水)」 給水人口別の水道事業数及び職員数の状況
※3 厚生労働省「水道事業における耐震化の状況(令和4年度)令和6年3月22日」
※4 国土交通省令和6年度予算決定概要(令和5年12月)P40


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