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メールマガジン掲載記事

◆◆◆学びの鍵◆◆◆

こちらでは、メールマガジンで取り上げられた内容を掲載しています。

2024年6月1日(第22号)


​​【台湾視察レポート】

 2024年5月15日(水)~17日(金)当センター代表の玉田太郎が、台湾・花蓮市を視察いたしました。
 今年4月3日7時58分、台湾・花蓮県東方沖合を震源とする気象庁マグニチュード7.7の地震が発生し、花蓮県和平では震度6強を観測し、日本でも宮古島・八重山地方と沖縄本島地方には「津波警報」が発令されました(※1)。台湾はフィリピン海プレートの西端に位置し、日本同様地震が多く発生する地域であり、今回の「花蓮地震」は、1999年9月21日に台湾中部の南投県で発生し2415人の死者を出した「921地震」以来の大地震となりました。
 花蓮市では約3時間後には避難所が開設されたという報道もありましたが、驚いたのは開設までにかかったスピードだけでなく質の高さ、そして閉鎖までの期間の短さでした。
 日本の内閣府と台湾政府、花蓮県、花蓮市、赤十字、医師、心理士、施設管理者など、様々な機関の代表者が出席する会合に参加させていただきました。平時から関係者のグループLINEによる情報共有体制が構築されている上に、発災翌日からは毎朝5時の協議があり、速やかな避難所開設がなされたとのことでした。また、被災者の健康に関するデータが避難所に入所してすぐに記録され、その後の身体的・精神的ケアにつなげる体制が構築されていました。例えば専門のボランティアが、絵を描いたりゲームをしたりする子どもの様子を観察し、異常を察すると心理士によるケアへとつなぐことができるそうです。

 また、花蓮県で1966年に発足した仏教系の慈善団体「財団法人台湾仏教慈済慈善事業基金会」が運営する総合病院と、そこに併設されている展示室にお招きいただきました。発災時に開設される避難所には2000戸分の青い軽量素材のパーテーション、4000名分の組立式ベッドが備えられており、実際の組み立ての様子を見せていただきました。パーテーションは4個程度であれば一人で同時に運ぶことができます。設置には二人必要ですが、あっという間に準備できます。プライバシーを配慮した、快適な空間と言えるでしょう。
 今回の地震では、家賃を補助したり、旅館に移動したりしてもらうといった施策により、地震発生5日後の8日には避難所が閉鎖されていました。そもそもこの地域では地縁・血縁が強く親類や知人の家に身を寄せる人が多かったため、避難所を使用する住民自体が少なかったということもあったようです。

 花蓮市で開設された避難所は1か所のみ、花蓮県全体でも8か所という少なさで、支援を十分に注ぐことができた、ということもあり、単純に日本の避難所の現状と比較することは避けた方がいいでしょう。しかし台湾では2018年から日本の防災士資格を参考にした「防災士(防災要員)」の養成を開始し、今では独自の防災体制を確立しています。官民連携がなされている様子や、情報共有の体制、被災者の生活向上を第一に考えるスタンスなど、先輩である日本の防災士である私たちも学ぶべきところが多いと感じました。
 
※1 気象庁 令和6年報道発表資料

​​【情報を正しく理解し、防災の行動につなげましょう】

 5月26日午前フィリピン沖で発生した2024年の台風1号は、5月31日に温帯低気圧に変わりました。
 台風の発生時期としては2010年代に比べると少し遅かったのですが(※1)、梅雨前線が活発化したことで、各地に大雨をもたらしました。昨年の台風発生数は17個と、ここ10年ほどの個数(20-30個)に比べると少なめでしたが、線状降水帯は3月から9月まで23回発生と、増加傾向にあります(※2)。
 気象庁は、予測が難しい線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけを、地方単位から府県単位に絞り込んで5月28日(火)から運用開始する予定でした。しかし前線に伴う大雨が予想されていることから、1日前倒しにして27日(月)に運用を開始し、鹿児島県(奄美地方を除く)と宮崎県に対して発表しました。2029年には市町村単位に絞り込んでの運用を目指しており、対象がより狭い範囲に絞り込まれることで、自分が暮らす地域の大雨に対する警戒を強めてほしい、と気象庁は呼び掛けています。
 一方で、2024年2月に気象庁が実施した「線状降水帯に関する情報についての一般住民アンケート調査」(※3)では、半数以上が「線状降水帯」という言葉は聞いたことがあるものの、どのような影響があるのか、自分が暮らす地域に発令されたかどうかについては十分に認識されていない、ということがわかりました。
 より精密な情報をいかにわかりやすく伝えるか、という更なる工夫が求められる一方で、その情報を十分に活用できるように、改めて情報の内容を理解し、自身や地域の危険を回避できるように備えましょう。現在【4期】の受付を行っている「防災士専門講座」では、関連する講座が複数ラインナップされています。防災士資格をお持ちの方限定の講座ですので、ぜひご自身の知識の更新のためにご受講なさってください。
 
  • 「気象災害・風水害」
    NHKラジオ 気象キャスター、日本気象学会 天気予報研究連絡会 委員 伊藤みゆき講師
  • 「土砂災害」
    一般社団法人 全国治水砂防協会 理事長 大野宏之講師
  • 「災害情報を正しく扱い活かす」
    京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター 教授 矢守克也講師
防災士専門講座 ホームページ

※1 気象庁 台風の発生数[協定世界時基準]
※2 気象庁 令和5年の実績 ~線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ~
※3 気象庁 線状降水帯に関する情報についての一般住民アンケート調査

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