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メールマガジン掲載記事

◆◆◆学びの鍵◆◆◆

こちらでは、メールマガジンで取り上げられた内容を掲載しています。

2024年7月1日(第23号)


​​災害廃棄物と事前の備え

 今年も、線状降水帯や台風などによる風水害に警戒すべき時期を迎えています。大きな災害の後には大量のゴミが発生します。皆さんは、災害廃棄物というとどんなものを想像しますか?2022年の台風15号において静岡県静岡市で発生した災害廃棄物を一例としてご紹介します。

 出典:災害廃棄物対策フォトチャンネル(http://kouikishori.env.go.jp/photo_channel/

 災害廃棄物は、倒壊した家屋の角材や柱材、木の枝や土砂、布団や畳、使用済みの消火器など多種多様にわたり、腐敗による出火や有害物質による土壌汚染、臭気など、二次被害ともいうべき問題を引き起こしかねません(※1)。住宅の倒壊による死者が最も多く発生した阪神淡路大震災では1500万トン、津波によって大きな被害を受けた東日本大震災では3100万トンもの災害廃棄物が発生し、どちらの被災地でもその処分には約3年を要しました。
 1月の能登半島地震でも石川県で244万トンの災害廃棄物が発生し、県はその処分期限を2年後の2026年3月末としています(※2)。5月から、円滑化・迅速化された公費解体・撤去の手続きが開始されたものの、解体に多くの時間を要することや、その業者の確保、災害廃棄物の置き場所の不足といった問題で、思うように進んでいない状況です(※3)。
 環境省は災害廃棄物の量を首都直下地震で1.1億トン、南海トラフ巨大地震では3.2億トンと想定しています。前者は狭い地域ではありますが首都機能が集中した地域で、後者では被害が24都府県に及び、津波により塩分を多く含む廃棄物が発生することも懸念されます(※4)。
 政府は、2014年6月国土強靭化基本計画において大量に発生する災害廃棄物の処理の停滞により復旧・復興が大幅に遅れる事態を回避しなければならないとして、災害廃棄物対策を国土強靭化政策に盛り込みました(※4)。このうち環境省による対策の中で以下の2つは知識や経験を持った人を活用する仕組みであり、発災時だけでなく平時の活動も制度に組み込まれていることが特徴的です。

  1. 災害廃棄物処理を経験したことのある地方公共団体職員を「災害廃棄物処理支援員」として登録し、発災時には被災地に赴き支援する「災害廃棄物処理支援員制度」を策定(※5)
  2. 2015年に研究・専門機関と一般廃棄物関係団体、廃棄物処理関係団体、建設業関係団体、輸送関係団体等で構成されるD.Waste‐Net(災害廃棄物処理支援ネットワーク)発足(※6)

 また、去る6月24日福島県いわき市は、発災後2日間は行政による対応は困難である、として、「地域住民主体の臨時集積所の開設」を打ち出し、官民一体の取り組みの必要性を訴えました。(※7)。
 災害廃棄物の処理の主体は地方自治体ですが、私たち自身が発災時にどのような状況になるのかを知っておくことはとても重要です。ぜひ、上記でご紹介したような過去の災害における災害廃棄物の発生の様子を記録した写真(環境省 災害廃棄物フォトチャンネル)なども参考になさって下さい。そして、家屋の耐震補強や浸水対策、空き家の処分、不要な家具などの処分・整理など、いわき市の取組みも参考に、ご自分が暮らす地域の問題として平時から各家庭や地域で考えていきましょう。

※1 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課 災害廃棄物対策チーム 災害廃棄物対策の基礎~過去の教訓に学ぶ~
※2 石川県 令和6年能登半島地震に係る石川県災害廃棄物処理の基本方針(令和6年2月6日)
※3 NHK 石川 NEWS WEB 能登半島地震5か月 公費解体完了は申請の2%
※4 環境省 災害廃棄物対策をめぐる動き
※5 環境省 災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)について
※6 環境省 災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)の機能及び役割
※7 福島県いわき市 市長記者会見

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