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メールマガジン掲載記事

◆◆◆学びの鍵◆◆◆

こちらでは、メールマガジンで取り上げられた内容を掲載しています。

2023年5月1日(第9号)


【 富士山噴火による被害想定 】

 2023年3月、富士山火山防災対策協議会は、新しい「富士山火山避難基本計画」を発表しました。2021年3月に公表された新たな富士山ハザードマップで、富士吉田市及び富士宮市の市街地の近くに想定火口が設定され、溶岩流が最も早く市街地に到達する予想時間が極めて短くなったほか、被害想定区域が拡大し、神奈川県を含む7市5町が新たに火山災害警戒地域に加わることとなったことから、旧計画を改定することとなったものです(※1)。

 火山から離れた地域に住む「自分」には関係ないと思われがちですが、例えば火山灰の被害は想像を超えた広範囲に及び、多くの方の生活に影響を及ぼします。今回は、新たな避難基本計画が定められたことを契機に、特に富士山噴火に伴う被害想定について改めて紹介いたします。

 富士山の噴火は1707年の宝永噴火を最後に、その後約300年間確認されていませんが、大規模な噴火が発生した場合、被害規模や影響は他の火山に比べ甚大なものになることが想定されます。例えば溶岩流は、噴火の規模や火口の位置などによっては東海道新幹線や東名高速道路を超え、駿河湾まで到達する可能性があり(※2)、直接の被害にとどまらず、経済活動を通じ、間接的に全国に影響を及ぼすことにもなります。

 また風向きや風の強さにもよりますが、宝永噴火並みの噴火が発生した場合、東日本から西日本のきわめて広い範囲で火山灰が堆積する可能性があります(※3)。中央防災会議のワーキンググループの報告では、降灰によって①鉄道は地上路線の運行が停止する②道路は乾燥時10㎝以上、降雨時3㎝以上の降灰で二輪駆動車が通行不能となる③電力は降雨時0.3cm以上の降灰で停電が発生する④上水道は原水の水質が悪化し、浄水施設の処理能力を超えることで飲用に適さなくなる⑤下水道は降雨時、下水管路のつまりにより、雨水があふれる⑥停電エリアの処理施設・ポンプで非常用発電設備の燃料切れが生じると下水道の使用が制限される、などの影響が発生するとしています(※4)。

 火山噴火への対策は、個人では限界があるところです。しかし行政や企業の対応もまだ十分とは言えません。現在、富士山の火山活動が活発化する兆候は見られていませんが、いざという場合に備え、自分の命を守ること、その上で、多くの命を守るための活動を続けていくことが求められています。

※1 富士山火山避難基本計画 2023年3月 富士山火山防災対策協議会
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/053/271/kihonkeikaku_1.pdf

※2 富士山ハザードマップ(溶岩流の可能性マップ)2021年3月改定 富士山火山防災協議会及び富士山ハザードマップ検討委員会
https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/kazanfunka/fujisankazan/1030190.html

※3 大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)(2020年4月7日公表) 別添資料1「降灰シミュレーションのパラメータと計算結果」 大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/pdf/syutoshiryo_01.pdf

※4 大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)(2020年4月7日公表)本文P10 大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/pdf/syutohonbun.pdf


【 薬の日(5月5日)】

  全国医薬品小売商業組合連合会が1987年に制定しました。611年5月5日(旧暦)のこの日、推古天皇が大和(現:奈良県)の菟田野(うだの)へ出かけて薬になる草や木、鹿などを狩る「薬狩り(薬猟)」を催したとされています。その後、薬狩りは毎年の行事となり、この日を「薬日(くすりび)」と定めたと日本書紀に記されています。

 採取した薬草には、菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)など香りの強い植物が多く含まれており、これらをお風呂に入れて入浴すると疫病や邪気を払い、子どもの成長と健康をもたらすと考えられてきました。「端午の節句・こどもの日」であるこの日に菖蒲湯に入る習慣が現在でも残っています(※1)。

 災害は、いつ、どこで何が起きるか分かりません。いざというときの災害時に備えて、日頃から、薬の準備をしておくことは非常に重要となります。災害直後は、救命救急が最優先され、慢性疾患の診療は落ち着いてからとなり、通常どおりの診療が受けられなくなる可能性が高いです。また、病院や薬局の薬の備蓄がなくなり、しばらく薬を受け取れない状況が起こりえます。

 そのため、慢性疾患などでいつも飲んでいる薬がある場合には、予備薬を常に用意しておき、すぐに持ち出せるようにしておくことが大切です。薬には期限がありますので、常に新しいものと交換することも忘れないようにしましょう。

 また、もし避難先で薬が足りなくなった場合、お薬手帳を持っていれば処方の内容がわかり、いつもの医療機関でなくてもこれまでと同様の薬を出してもらうことができます。コピーしてお財布や非常持ち出し袋に入れておくと安心です。

※1 奈良県宇陀市「推古天皇の薬猟」:うだ記紀・万葉
https://www.city.uda.nara.jp/udakikimanyou/yukari/dekigoto/suikotennou.html


◆◆◆過去ログ◆◆◆

2023/04/01
第8号:「第211回国会提出法律案(防災関係)」
2023/03/01
第7号:「世界気象デー(3月23日)」「東日本大震災から12年」
2023/02/01
第6号:「緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加」「春一番」
2023/01/06
第5号:「阪神・淡路大震災 ~声が届かない~!」「令和5年度防災関係予算案」
2022/12/01
第4号:「「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」 12月16日運用開始」「糸魚川市駅北復興まちづくり計画」
2022/11/01
第3号:「世界津波の日(11月5日)」「トイレの日(11月10日)・世界トイレの日(11月19日)」
2022/10/01
第2号:「二百十日(ニヒャクトーカ)」
2022/09/01
創刊号:「これからの事前の備え~ホームサバイバルトライアルの勧め~」

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